ターミネーション・ショック
Termination Shock

ターミネーション・ショック

ニール・スティーヴンスン 著

坂村 健 解説

山田 純 翻訳

定価 3,080円(本体 2,800円+税)

ISBN 978-4-89362-416-1

四六判 並製

696頁

2025年10月15日 発売

 

熱波、洪水、海面上昇…気候危機を前に、テキサスの大富豪が放った一発の砲弾が、地球の気候を、そして世界の秩序を書き換える。
オランダの女王、インドの戦士、コマンチの末裔――それぞれの「物語」が交錯する時、人類は新たな神話の幕開けを目撃する。
禁じられた“応急処置”は、本当の傷よりも深い痛みを残すのか?

『スノウ・クラッシュ』で“メタバース”を生んだニール・スティーヴンスンが描く、破天荒な英雄たちによる地球改造の「神話」



書籍版

定価 3,080円
(本体 2,800円+税)

電子書店版

定価 2,926円
(本体 2,660円+税)


  • 内容紹介
  • 海外の書評


――地球温暖化が深刻化した近未来を舞台にしたCli-Fi(気候変動フィクション)――


オランダの女王サスキア自ら操縦する小型機が、滑走路に乱入した野ブタと衝突して不時着。
その場に居合わせたのが、テキサスで巨大な野ブタを追っていたハンターのルーファス。サスキアをその場から助け出すと、彼女と行動を共にすることになる。
世界が気候変動による海面上昇や異常気象に苦しむ中、テキサスの億万長者であるT.R.シュミット博士は、「世界最大の銃=ビッグガン」と呼ばれる巨大な装置をメキシコ国境近くに建設し、二酸化硫黄を成層圏に噴射するソーラー・ジオエンジニアリング計画を進めていた。そして、オランダ、ヴェネツィア、太平洋の島々など、海面上昇の脅威に晒される低地国家や地域の有力者と資産家を招いた発射実験によって既成事実化してしまう。
T.R.のソーラー・ジオエンジニアリング計画の支持者と反対者の間で国際的な対立が激化していく中、登場人物たちはそれぞれの立場で地球規模の危機に立ち向かう。



『ターミネーション・ショック』カバーより

ネーデルラント女王の操縦する小型機は、滑走路に乱入した野ブタと衝突し不時着。この混乱を助けたのが、地元ハンターのルーファス。テキサスの大富豪T.R.は、成層圏に硫黄を散布し地球を冷却する計画を開始する。一方、カナダ出身のシク教徒のラクスは、祖先の地パンジャブへの旅から、印中の領土紛争に巻き込まれる。気候変動と地球を操作するソーラー・ジオエンジニアリングの是非を問う近未来SF小説。
──などという、あらすじを読んでも多分、本書の内容はわからないと思う。とにかく、一見無関係の話が続き、テーマの全容が見えてこないので、途中で投げ出す読者もいるかもしれない。しかし、それは本当にもったいない。投げ出したくなったら、ぜひ巻末の私の「解説」を読んでみてほしい(先の見えなさを楽しめる読者は読後に)。多方面の教養をちりばめながら、物語は予測不能な展開を重ね、一見無関係なエピソードが、やがて気候変動を巡る壮大な「神話」へと収斂していく。そういう「物語」の醍醐味を感じていただければ幸いだ。(坂村 健)



著者:ニール・スティーヴンスン(Neal Stephenson)
1959年アメリカ生まれ。現代アメリカを代表するSF作家の一人。
ヒューゴー賞、クラーク賞、ローカス賞、プロメテウス賞などを複数回受賞。
テクノロジー業界に影響を及ぼした作品も多く、“メタバース”という言葉を生み出した『スノウ・クラッシュ』、暗号資産を予見する『クリプトノミコン』、ナノテクノロジーが発達する未来を描いた『ダイヤモンド・エイジ』、月崩壊と人類存続を描く『七人のイヴ』などで知られる。
『スノウ・クラッシュ』は米TIME誌のAll-TIME 100 Novels(史上最高の英語小説100選)にも選ばれた。


解説:坂村 健(さかむら けん)
電脳建築家、工学博士、東京大学名誉教授、INIAD(東洋大学情報連携学部)創設者、同cHUB(学術実業連携機構)機構長。
オープンなコンピュータアーキテクチャTRONを構築。家電製品、車のエンジン制御、宇宙機の制御などに世界中で多数使われている。
IEEE Life Fellow、IEEE Golden Core Member。
2003年紫綬褒章受章、2006年日本学士院賞、2015年ITU150 Award、2023年IEEE Masaru Ibuka Consumer Technology Award受賞、2024年瑞宝中綬章受章。2023年TRONリアルタイムOS、2024年TRON電脳住宅がそれぞれIEEE Milestone認定。


翻訳:山田 純(やまだ じゅん)
INIAD cHUB(東洋大学情報連携学部 学術実業連携機構)副機構長、INIAD客員教授。


(※プロフィールは2025年のものです。)

海外でも高い評価を得ています。(敬称略。一部引用)


ニューヨーク・タイムズ紙
  • 「スティーヴンスンはスペキュレイティブ・フィクション(思弁小説)界で最も綿密な建築家の一人だ。『ターミネーション・ショック』は稀有な偉業を成し遂げている。途方もなく想像力豊かでありながら、同時に現実に根ざしているのだ」

ワシントン・ポスト紙
  • 「綿密に描かれたアクションシーン、驚くべき展開、親しみやすくも風変わりな登場人物、そして魅力的な対話により、スティーヴンスンの作品はページをめくる手が止まらない。彼の最新作も例外ではない。『ターミネーション・ショック』は、我々の時代で最も切迫した実存的問題を見事かつ革新的に扱いながら、綿密に設計された喜びのギガトン級の爆発を成層圏レベルで届けている」

デイリー・テレグラフ紙
  • 「素晴らしく人間的で、独創的で、時として予言的。スティーヴンスンは21 世紀の科学系ライターたちにとっての象徴的な存在となった」

ガーディアン紙
  • 「没頭してしまうスペキュレイティブ・フィクション」

ワイアード(ウェブメディア)
  • 「スティーヴンスンが持つビジョン、影響力、そして熱狂的なファンダムの特別な組み合わせを持つSF作家は間違いなく他にいない。彼はシリコンバレーとその隣接文化の創世神話の第一の記録者である。その高い自己評価、破壊的イノベーション、オタクたちが築いた世界の記録者なのだ」

バズフィード(ウェブメディア)
  • 「魅力的で思考を促す読み物」

サンデー・タイムズ紙
  • 「SF界の巨人としてのスティーヴンスンの評判は当然のものだ」

SFX誌
  • 「素晴らしく面白い。SFの最先端だ」

カーカス・レビュー誌(高評価レビュー)
  • 「この本は、災害に直面した政治的な足踏みに対してリアルでありながら、人々が実際に結束して文明を救おうとする可能性のある未来を恐れずに想像する、稀有な気候スリラーだ。我々すべてが必要とする気候変動フィクションの類だ」

パブリッシャーズ・ウィークリー誌
  • 「この小説は典型的なスティーヴンスン作品だ。猛烈に知的で、奇妙で、暗いユーモアに満ち、大胆に思弁的。スティーヴンスンは現代で最も尊敬されるSF作家の一人となった」

シカゴ・レビュー・オブ・ブックス誌
  • 「ニール・スティーヴンスンはSF小説というジャンルの中で大きなアイデアに取り組むことを恐れたことがない。そして『ターミネーション・ショック』は彼の最も先見的で、タイムリーな作品かもしれない」

アメリカン・パーパス(『歴史の終わり』の著者、フランシス・フクヤマが主宰するウェブメディア)
  • 「温暖化する世界における地政学について、真に興味深い問題を提起している」

ブックバブ(ウェブメディア)
  • 「想像力豊かで、極めて現実的」

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