プロジェクトリーダーから(TRONWARE VOL.90)
- 自分の目で見て自分の頭で考えることが重要
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10月中旬に中国・北京で中国初のトップ向けのRFIDソリューションに関するコンファレンス“RFID China Summit
2004”が開催された。日本にいると「ICタグの世界標準はEPCしかない」とかせいぜい「EPCglobal vs
ユビキタスID」というような対決の構図で報道されるだけだが、ここは別世界のようだった。このコンファレンスには350名以上のエクゼクティブが参加し、米国からもヨーロッパからも多数の関係者が詰めかけた。中国からはオールスターキャストで標準化委員会をはじめ、政府の情報関係の重要なVIPは皆参加していた。だが、EPCglobal関係者はひとりもいなかった。ISOをはじめ各種RFIDの標準化委員会メンバーを歴任しているQ.E.D.
SystemsのCraig Harmonや TIのBill
Allenなどが講演し、「EPC規格は、国際標準でなく数多くある規格のひとつにすぎない」とか「EPC規格のRFIDは、目標とする5セントでは作れない」などと日本では絶対聞けない話でいっぱいだ。
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参加者にはuID Chinaが製作したucode規格のRFIDタグが付いた入場券を配布し、UCを利用したユビキタスIDセンターのシステムで登録・入退場管理を行い、好評を博した。
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私は、“uID:Open Global Standard for RFID
tags”という招待講演を行い、“Standards:Harmonizing the Effort to a Global RFID
Standard”というパネルにパネリストとして参加した。中国のトップの意見を聞くと、RFID規格に関して「中国としては、自分たちの要求が入らない規格を無条件に使うというようなことはしない」という。中国ではこのような主張が主流で当然のこととされている。日本とはまったく異なるが、もっともだ。もちろん、国際標準は重要で米国の規格も多数利用しているし、何も米国にノーを突き付けているのではない。自国で使えるのか、自分たちの領土にとって有利であるかが、まず重要なのだ。極めて真っ当、至極当然のことを言っている。
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次に私たちが進めているuIDが、オープンアーキテクチャに基づき、各国のローカリティを重視していることも評価された。3番目には、「uIDが本当に動いているのを確認した。他は動いているのを見たこともない」と言っていた。このように正しく自分の目で見て自分の頭で考えることが重要だ。我が国ではどうも自律していない意見が多いのが気になる。
また、この7月に札幌で第3回日中韓情報通信大臣会合を行ったとき、中国、韓国の大臣も来日して麻生総務大臣とuIDを中心として3国間で共同実験を行うことを決定したが、この日も共同実験の実施が再確認され、日中韓の協力が重要であることが改めて認識された。このように非常に有意義な会議であった。
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さらに我々のパートナーである中国科学院計算技術研究所を再訪問して来たが、中国科学院ではT-Engineを用いた開発が順調に進められていて、有力なミドルウェアの移植が行われていた。また北京大学の方のお話では、T-Engine、T-Kernelの大学院コースが始まっていて、すでにコースを100人ぐらい受講しており、次の100人に向かっているということで、これもたいへん有意義であった。
韓国とも韓国システムプログラマーズ協会(KSP)に続き、韓国貿易協会と提携し、T-Kernelの正式な講習会が始まる。今年はアジア地区での普及活動の成果が大きく、シンガポールでのTEADEC(T-Engine
Application Development Centre)に続き、新しい活動が次々と始まった意義深い年であった。
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TRONSHOW2005には、中国や韓国、シンガポールのパートナーが多数やってくる。T-Engineフォーラムは、3年目をクリアし、さらに来年にはT-EngineフォーラムならびにユビキタスIDセンターの活躍が期待されている。会員会社も500社を突破するのも時間の問題となってきた。T-Engineフォーラムはユビキタス・コンピューティング時代の世界最大のリアルタイム・オープンプラットフォームの団体として、期待も高まり、その期待に十分応えられると思っている。
坂村 健
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