プロジェクトリーダーから(TRONWARE VOL.79)
- 先行き明るい2003年のT-Engineにご支援を
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2002年はTRONプロジェクトにとって記念すべき年となった。それは、言うまでもなくT-Engineプロジェクトをスタートさせたからである。
2002年6月にスタートしたT-Engineフォーラムも会員は当初22社だったのが年末には80社を超えるまで急成長した。
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12月に行われたTRONSHOWでは、出展社数が倍増しただけでなく、T-Engine関係の製品もあふれていた。
T-Engineが組込みプラットフォームとして力強く進んでいることを印象づけるのに十分であった。
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T-Engineプロジェクトは組込みシステムにおいて、ハードからソフトまで一貫して考え、開発過程の生産性を画期的に上げることを目的としている。特徴として、「チップフリー」がある。これはマイクロプロセッサは何でもよく、T-Kernelという新しいOSを搭載することにより異種マイクロプロセッサでも、T-Kernel上に作られたミドルウェアは再コンパイルにより共通に使えることを可能とするものだ。
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そのためにはハードウェアの標準化も必要でありT-Engineボードが生まれた。T-Engineボードはまた実機に近いコンパクトなサイズにすることによりそのまま製品イメージに近いプロトタイプを短期間で開発できることをねらっている。
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現在、T-Engineで世界の組込み型32ビットマイクロプロセッサのほとんどをサポートしており、各プロセッサに対応するボードが世の中に出てきている。T-Engineはこのような特徴を持つ開発プラットフォームであるが、広く普及することをねらい、「3つのパッ」というキーワードを打ち出している。つまり「パっと作れるT-Engine」「パッと移せるT-Engine」「パッと使えるT-Engine」である。「パっと作れるT-Engine」は「短期間でシステム開発ができ、大量の組込み需要に素早く対応できること」、「パッと移せるT-Engine」は「ソフトウェアが容易に移行でき、多様な組込みシステム展開が負担なく可能なこと」、「パッと使えるT-Engine」は「できたものが短期間でマーケットに投入でき、素早い市場投入のビジネスに応えられること」を意味している。
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当初の予定では2002年いっぱいで基本的なT-Engineの整備を行い、2003年からミドルウェアを流通させ、
2003年中にはその上で製品を開発していく予定だったが、プロジェクトは前倒しで進んでおり、TRONSHOW2003でも三菱電機が同社のμT-Engineを使って開発した携帯IP電話を、また松下電器の子会社ピンチェンジは日立製作所のT-Engineを用いて開発したネット端末の試作機を出品していた。このようにT-Engineの優れた点に注目してくださるいくつかの会社が、積極的に利用してくださっているのはたいへん力強い。T-Engineのさらなる有用性を多くの方々に理解していただくためには、このような実例が重要であり、これに刺激されT-Engineを利用して開発する人々が増えていくことを期待している。
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T-Engineに関しては目的のひとつである「ミドルウェアの充実」も短期間にもかかわらず進んでいる。KDDIのSVG Mobile
Engineというベクトルグラフィックス描画、エイチアイのMascot Capsule
Engineという3Dレンダリングエンジン、フランスNexWaveのNSIという情報家電向けミドルウェア、グレープシステムのT-Kernel対応ミドルウェアなど充実してきている。さらにアプリックスはJBlend
for T-Engineという名の組込み向けJava実行環境を提供し、イーソルは、eBinder for
T-Engineというランタイム環境および開発ツールのスイートを出している。
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パーソナルメディアのT-Engine開発キットも、日立製作所、三菱電機、NEC、横河ディジタルコンピュータからの合わせて5種のボードが手に入るようになってきた。2003年はこの良い流れを止めることなくさらに増強していきたい。これらの開発キットは使い方も統一されているので習得が容易であり、さらに普及のためのセミナーも積極的に行っていきたい。このプロジェクトで掲げているミドルウェアの流通についてはできるだけ早い機会に
T-Engineフォーラム内に流通センターをつくり積極的に良いミドルウェアを流通していくつもりである。
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T-Engineが特徴としているセキュリティ基盤eTRONについても eTRON/16
Dualという接触、非接触を持つ新しいeTRONのリリースが2003年半ばに予定されており、だいぶ使いやすいものになってきたと言える。eTRONに関しては私たちの進めるユビキタスIDセンターと関係しており、今後重要性は高まる。eTRONに関してはパーソナルメディアから初のeTRONを採用した応用製品「ファイルロッカー」も発売された。2003年は実際使う人の数を増やすことに重点を置くつもりでいる。
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T-Engineはユビキタス環境のためのオープンなリアルタイム組込みプラットフォームであるが、ユビキタス環境向けにある程度の大きさの標準T-Engine、μT-EngineからさらにnT-Engine、
pT-Engineといったセンサーだけを付けるような超小型機器向けまでそろえている。現在、超小型向けの試作も終了し、先行きは非常に明るく、力強く思っている。
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2002年にスタートしたT-Engine、好調である。2003年もこの流れで、ますます成長させていきたい。これからも多くのご支援をお願いする次第である。
坂村 健
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