プロジェクトリーダーから(TRONWARE VOL.78)
- 良いものは受け入れる欧州の土壌
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10月にヨーロッパを回ってきた。欧州は、全般的に景気が停滞していて、ドイツを中心としたEU(欧州連合)の経済は不振だ。一方、英国・ロンドンが元気だ。街の様子にも現れている。街全体がコンパクトなので中心街は静かだが、何となく活気がある。それは、古い中にもさまざまな新しい試みが行われているからだ。都市活性化には新陳代謝が必要だということがよくわかる。例えば、デザイナーのテレンス・コンラン卿。デザインを軸に家具や食をプロデュースして生活全般を変えていこうとさまざまな活動をしてきた。「コンラン・ショップ」は日本にもあるが、本場のショップに行くと、客がたくさん入っていて、モノがどんどん売れている。ロンドンのレストランはうまくないと言われるが、コンラン卿のプロデュースしたレストランは、どこも予約でいっぱいで活気に満ちている。フィッシュ&チップスのようなイギリス庶民の伝統的な食べ物までもここで食べたものはおいしかった。
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ミレニアム記念で作られた巨大な観覧車のロンドンアイ。直径135mと世界最大で、普通の観覧車と違い、自転車の車輪のような構造。ゴンドラは自動車がすっぽり入ってしまう25人乗りで、総ガラス張りの卵型カプセル。これが車輪の内側でなく外周部にずらりと並んでいる。見るからにSFである。カプセルが頂点に達したときカプセルは、巨大な車輪の頂上に突出する形になるので、まさにロンドンが一望できる。完成してまだ2年もたっていないが、ヨーロッパの新名所として多くの人が集まってきている。ロンドンには、博物館、美術館が多いが、ミレニアムをきっかけにリニューアルオープンしたところが多く、多数の人を集めている。さらにSOHO地区に行けば、さらなる活気があり、決しておいしくないレストランにすら人がたくさん入っている。結局、人間、何ごとも新しいことに前向きに、活動的になることが大事だ。
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世界最大の携帯電話会社Vodafone(ボーダフォン)が、子会社の日本のJ-フォンの写メールサービス(向こうではPicture
Messagingという)を欧州に持っていき“Live!”と名づけ、この秋から8ヶ国でサービスを開始した。端末はとりあえずはシャープと松下製が使われる。オランダに寄ったとき、たまたまこのサービス開始時だったのだが、この端末を誇らし気に知り合いに見せている人を多数見かけた。iモードもオランダやドイツ、ベルギーなどでは、すでに始まっており、英国でも始まる。良いものはどこででも受け入れられる。写メール、iモードといっても欧州の携帯電話はGSM方式で日本のPDC方式とは違うので、日本から携帯を持っていっても使えるわけではない。第3世代携帯電話のW-CDMAが普及すれば、日本のFOMA端末を欧州に持っていけばそのまま使えるはずであるが、ITバブルの崩壊で計画の延期が相次いでいる。残念ではあるが、今しばらく時間がかかるのはしかたがない。それでも優れた技術やサービスを海外へ持ち込めば、現地では必ず歓迎される。実は欧州では各地でT-Engineを紹介してきたのだが、どこでも新しくいいものにはどん欲で大変な興味を示してくれた。家電でないコンピュータの分野でも日本から世界に新しい良質な技術、製品を発信すれば、受け入れてくれる。
日本のITも海外のものをいち早く持ってきたり、古いものにただ固執するだけでなくて、自分の頭で良く考えて新しいことを始め、それを積極的に世界に発信していくべきだと強く思った。
坂村 健
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