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プロジェクトリーダーから(TRONWARE VOL.69)

オープンアーキテクチャへの流れとインターネット

 今年の春で、TRONプロジェクトは18年目に入った。TRONプロジェクトが当初から掲げていた、“基盤となる仕様の情報をオープンにして、それに対し、多くの人たちが協力して、システムを作っていく”という考え方は、プロジェクトを始めた当時はあまりポピュラーな考え方ではなかったが、今は世界的な流れのひとつになってきた。オープンアーキテクチャ化の流れというのは、別に組込みシステムの世界にとどまらず、パーソナルコンピュータやワークステーションのオープンソースソフトウェアに見られるように世界的に定着してきている。だがオープンといってもいろいろなものがある。Linuxでも採用しているGNUを起源とするGPL(General Public Lisense)では、よく知られているように「フリーソフトウェアがそのユーザーすべてにとってフリーであることを保証するため」に、ソースコードに一部変更を加えた場合は、その部分も公開しなければならない。これは確かに公平であるが、ビジネスをやる人にとっては、うっとうしい制約でもある。

 一方、FreeBSDなどで採用されているいわゆる最近のBSDL(BSD Lisense)は、もっと自由でそのような制限はない。OSに限らずフォントでも、私的に使うぶんにはよいがビジネスには使えないなど、一見オープンなシステムでもさまざまなパターンがあることがわかる。オープンアーキテクチャといっても、内実はいろいろであるので気をつけなければならない。次に問題になってくるのは、仕様のメンテナンスを誰がやるかである。完全にボランティアでやる、誰かが寄付をする、大きな会社が対価を取って責任を持ってサポートする、などが考えられる。商業的にクローズドアーキテクチャの商用OSと戦おうとした場合には、どうやってサービス性を上げるかの問題も出てくる。そうでないと怖くてビジネスの場では使えない。ビジネスモデルとしては、例えばLinux大手のRed Hat社の場合、組込みOSのeCosは、μITRONのインタフェースをサポートしており、ソフトウェア自体はタダだが、メンテナンスや教育に対して料金をいただくというやり方で成功している。アメリカやヨーロッパでもうまくいっているという。いくらタダのソフトウェアといっても誰も何に対してもお金を払わないのでは、限界が出てくる。

 今のドッグイヤーの世の中で、周辺機器のドライバや各種ミドルウェアの整備など、商用ソフトにとても勝てない。このようなメンテナンスや教育は、メールやウェブを使って行われることが多い。明らかにインターネットはオープンアーキテクチャの普及を助けている。そしてインターネットの情報流通の迅速性がサポートも変えていく。いやインターネットがなければ、オープンアーキテクチャがここまで普及するのはとても不可能だったろう。

坂村 健