プロジェクトリーダーから(TRONWARE VOL.46)
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今年2月に東京大学総合研究博物館で行われた冬季特別展『デジタルミュージアム』を通して、人類が何千年もの間に蓄えた知識をコンピュータで効率良く扱うような(人工知能とは異なる)マルチメディアを使った新しい研究分野があることを多くの人々にわかってもらうことができた。そこで第2弾として総合研究博物館ではテーマを建築に絞ってコンピュータと建築とのかかわりを考える展覧会を、去る5月13日から6月10日まで行った。我が国だけでなく、広く諸外国からこの分野で活躍する方々を招き、多彩なコンピュータによるプレゼンテーションやコンピュータと建築についての興味深いディスカッションが会期中に行われた。
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この『バーチャルアーキテクチャー展』は「建築において、実現された建築と実現されない建築の差はどういうことか」という疑問がきっかけで始まったが、不可能を可能にする有力な道具としてコンピュータに着目して、さらに一歩踏み込んでコンピュータ時代の建築とはどういうものであるかのプレゼンテーション、ディスカッションを多くの人にお願いした。もちろん明確な結論が出るようなものではないが、コンピュータが私たちの生活に与えている影響、特に建築
というデザイン集合体に与えている影響は大きく興味深い。
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私はコンピュータは無色透明な道具だと常日ごろ言っているが、建築もコンピュータのよう無色透明な存在になるべきだという考え方もある。だがコンピュータは今どんどんと現実に近づいている。例えば高度なヒューマンインタフェースはGUI(Graphical
User
Interface)をはじめとして現実を模倣し、3次元のバーチャルタウンやバーチャルモールなども一般的になろうとしている。だから今こそ建築は、バーチャルな世界でなくリアルな世界の出来事として、シンボル的な存在感を主張するべきではないかというのが私の建築に対する考え方である。
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建築家はもっと実在の世界で闘ってほしいし、コンピュータ時代の建築といえるものを表現してほしいというのが私の建築界に対するエールである。同時にバーチャル世界の構築でもなく、リアル世界の中に入っていくコンピュータ――「どこでもコンピュータ」のコンセプトが重要になってきている。電脳住宅や電脳ビルといったTRONプロジェクトのやってきたことも、コンピュータにとっての実験というだけでなく、建築のサイドからも再度強い関心が寄せられている。ここに来てコンピュータと建築の両方の目指すものがやっと互いに見えてきたと最近感じているのである。
坂村 健
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